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Walking in the forest

2022年6月25日(土)ー7月13日(水)


Cyg art gallery


〒020-0024


岩手県盛岡市菜園1-8-15 パルクアベニュー・カワトク cube-Ⅱ B1F



昨年の冬、私は暇さえあれば近くの花咲山という山を歩いた。久々に雪の多い冬で、地表から何十センチと雪が積もり、靴底は雪を踏み締めているのに現実感がない。山を降りればすぐ人里だというのに木々に囲まれ道行は白く、物思いにふけるのに適していた。




芥川龍之介の作品に『藪の中』という短編がある。結ばれたばかりの若い夫婦が強盗に襲われ夫は殺される。聞き取りをする検非違使に目撃者や当事者は語るが少しずつ齟齬があって実態は分からないまま。「真相は藪の中」の語源にもなった話である。決して大木ではない木々でも視野を隠すにはちょうど良い。隠れたパーツが違えば見えてくる風景も違う。タイムラインに流れてくる感染者数も、死傷者数も数字に整理されてしまえば彼らの日常は見えないし、ネット上に流れる少女の笑顔はAIで作ることが出来る。


それでも正しいか正しくないかは脇に置いて、木々の隙間から見えてしまったものに感情を持たざるえない。その風景を誰かと共有できなくとも。



Walking in the forest. 森の中を歩く。随分前に雪は溶けた。裸の木々が生い茂り始め、森は深くなる。



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